木造技能者育成検討委員会で議論された大工技能者の現状の分析

  1. 高齢化と若年入職者の減少
    1. ①大工技能者の高齢化と減少
      • 国勢調査では、大工人口は約40万人(2010年)であり、2005年~2010年の5年間で14万人減少している。また、60歳以上の大工は約11万人で大工全体の28%を占める(2010年)。
      • 今後10年間で約11万人の高齢大工技能者の引退・退職が見込まれ、大工人口は30万人を切ることが予測されている。
      • 現在80~90万戸(新設住宅着工戸数)を40万人の大工で支えていることから、大工人口が30万人となった場合、60~68万戸程度の生産力となり、木造住宅生産に必要な大工を確保できなくなることが危惧されている。
    2. ②若年層の大工人口の減少
      • 2000年以降、少子化の影響により、就職年齢人口(15~24歳以下)は5年毎に10~15%ずつ少子化が進行しているなか、大工技能者における就職年齢人口は5年毎に約50%で減少しており、少子化のペースをはるかに上回っている。
      • 若年層の離職率が高く、入職しても早期に見切りをつけ、就労が継続していない。
      • 若者の職業や就労に対する考え方と現状の大工技能者の待遇とミスマッチが生じている。
  2. 新規入職者が確保できない背景・要因
    1. ①住宅生産システムの変化と工務店の業態の変化
      • プレカット率の上昇により手刻み加工を必要としない住宅生産が主流となった。経費削減のためプレカットを選択し、工務店は棟梁を始めとする常用大工、下小屋を手放して内製型から、営業マンと現場監督によるアウトソーシング型が主流となった。
      • 大工に求められる能力は加工技術から組立て・仕上げの正確さとスピードに変化した。
      • コスト競争が激化し、大工・工務店の淘汰が進行した。
        1. 事業所数:2001年135,760ヶ所→2011年77,254ヶ所[約43%減少](経済センサス)
        2. 従業員数:2001年590,521人→2011年311,279人 [約47%減少](経済センサス)
      • 工務店に専属して、見習いなら盆暮の親への手土産や病気の時の面倒やお金の工面など、生活面の面倒も見てもらっていた日給月給の大工は受け皿が少なくなったことにより、1棟毎の手間請負が主流となり、社会的な保障を持たない一人親方化が進行した。
    2. ②大工の慣習、働き方の変化
      • 徒弟制では、見習い→職人→親方にステップアップすることが一般的であったことから、未だに独立志向が強い職種である。
      • プレカット、既製品、電動工具等の普及により、加工技術を修得せず、早期に手間請けで稼げる環境が出現し、一人親方へ独立志向が強まった。
      • 手刻み加工技術等を修得しないまま、日々の仕事に追われる一人親方の現状があり、その後の技能習得の機会は減少していった。
      • プレカット、既製品の組立てが仕事の中心となり、単能工的な一人親方は、30代~40代で賃金ピークを迎え、年齢とともに作業スピードが落ち、収入が減少することとなった。
      • 一人親方は労災への加入が少なく、怪我の保障がない等、安定した生活が見出し難い。
      • 見習い工を受け入れたくても、一人親方は自分の作業で余裕が無いため、育成が困難な状況に置かれている。

大工技能者の現状の分析