H27年度のコンペティション審査結果(画像をクリックすると拡大されます。)
表彰式は、3月11日に木材会館で行われ、以下の7点が表彰されました。
林野庁長官賞 「木のまちの輪廻」 大内 真理奈 東京工業大学
講評:
木材利用の中でも,国内では最も重要な課題の一つといえる「地域材活用」に着目し,学生自身が現場調査により肌で感じた問題点を軸に据えた作品である。林業,林産業(木材加工),建築物に至る一連の流れを意識し,その体感空間を「木材利用促進を担う学びの場」として提案した点が評価された。提案書におけるプレゼンテーションも自身の構想を良く表現しており,作品としての完成度も優れている。今後は,こうしたコンセプトをもつ建築物を都市部(街なか)で如何に具現化するかということについても研鑽を積まれ,木材を活用した街づくりとこれによる森林・山間地域の活性化に貢献されることを期待している。
木を活かす学生課題大賞 「こどもが集う木造遊具」 志村 将宏他 秋田県立大学
講評:
本作品は1998年から秋田県角館地域で活動している木匠塾メンバーによる遊具である。これまでも実際に活用できる作品を角館の地域住民の方々と相談し、地元の職人による技術指導を受けながら毎年製作が続けられており、大学の講義では得ることのでき ない貴重な体験になっている点でも、評価できる。
木造建築物・工作物部門賞 「再編する縁」 崎山 涼 工学院大学
講評:
島の民家を対象として、独居の家をどうしたらよいか、という課題に回答を示したものである。一人には大き過ぎる民家を減築して、一人に相応しい空間とし、残りを集会施設として再生するものである。独居世帯は、今後、地方のみならず、都市部でも、ますます増えていくことが予想されている。課題設定や解決の方向性が、高い能力を示している。ただし、減築により中庭のできた集会施設について、その具体的な利用の姿が図面に表現されていると更によかった。また、学生作品にはありがちなことであるが、収納など2次空間が不足している。表の空間とバックヤードのメリハリがあると、より実現性の高い計画となったであろう。
ものづくり部門賞 ヤタイ「桟」 淡路谷 直季 京都府立大学
講評:
地域の人たちの要望から発展し、地域の様々なイベントで活躍する“ヤタイ”。それが各地域の人々と学生とを繋いで、さらに木を活かしたものづくりの楽しさ、それを活用する喜びを伝えてくれているように思います。伝統的な木組みを応用したパーツの構成方法も素晴らしいと思います。屋台としての機能性、収納・運搬の合理性、様々な利用が可能な発展性、それらを兼ね備えた屋台へと更なる進化を遂げ、人々の生活の中で広く、そして長く使われていくことを期待します。
木質空間部門賞 「浮遊する森」 成 潜魏 日本大学
講評:
東京・青山の繁華な通りに面して建つ、一部が吹き抜けになっている木造5層の建物である。青山を実際に歩いたときに、子どもや高齢者が入りにくい建物が多いことに気づき、「誰に対しても親切な、誰でも好きに入れる、誰でも好きな場所」をテーマに、人と自然が接することのできる豊かな木質空間をイメージしたという。年月の移り行きとともに人間の生活様式が変化しても対応できるよう、建物の壁や床を簡単に取り外せる構造になっているところが評価できる。構造を木造にしたメリット、グリッドの考え方や火災についてなど、より具体的な構造システムを提示し、「構造を含め成長する建築」について、さらに明快に提案してもらえれば、より良い作品になる。
木を活かす活動部門賞 「新たな生活のカタチ」 平岡 侑樹他 大分大学
講評:
国産材で生産可能となってきた2x4材を用いた木材利用の持続性にもつながる新らたな建築への提案という本タイニーハウスへの取り組みとして本作品を評価したい。特に、木を活かす部門として重要と考える生産体制の明確化や実物があるという点も高く評価したい。また、新しい住まい方、本建築物の活かし方についても提案している点はおもしろい。ここに、より新しい活用方法などが見える形で提案されていれば、よりよかったと考える。
審査員特別賞 うすき竹宵×光のアート 山下 竜平他 日本文理大学
講評:
11月上旬に開催される大分県臼杵市で開催される<うすき竹宵>のイベントへ参加に際して、ロウソクの光と竹アーチを組み合せた独自で作品などを展示する試みである。竹林の人工森林への浸食は大きな社会問題となっており、良質な木材資源の保護への関心を高める意味からも意義ある試みとして高く評価できる。また、ものづくりへの感性の醸成や共同作業を通じて、人の輪の大切さを実感したことは今後の社会生活への大きな糧となったことであろう。