中大規模木造建築物に係る防耐火設計者育成事業の概要

事業の目的

 1987年の建築基準法の改正により1990年代には、大規模木造建築の走りとなった多くの木造ドーム建築が造られた。しかし、その後ドーム需要が一段落すると大型木造はぴたりと鳴りを潜め、これらの需要を当て込んだ大断面集成材工場は、しばらく青息吐息の状況に追い込まれた。
 また、その技術は、大手ゼネコンを中心とした技術であったために、その技術がすそ野の広い一般建築業界に流布することもなく木造ブームとして終わった。
 これまで、設計・施工者に向けた大規模木造の一般的な防耐火講習や木3学、法令改正関係、木造文化財関係の講習を行っているが、一般設計者だと、「最近の防耐火設計は、どんなことになっているのか」という話がわかり易く、かつ仕事に結びつく形での説明が、喜ばれる。しかし、このような一般的な話では、自分で何かを立ち上げる時の力にならないので、もっと基本を現代の色んな要求と結びつくような形で理解してもらえるようにしないと、これからの大規模木造の防耐火設計にはつながらないと感じている。
 今回の法改正で、大規模木造に関しては、性能規定化がほぼ完成し現在、施行令、告示の検討が進められているが、今後暫くは、これによって法的な枠組だけはできた大規模木造について、実際の建物の設計・実現、個別の技術開発、法律の初期不良対応の告示の追加、関連告示や試験法の整備等が進むと思われる。こうした部分について、研修者が取り組む際に何らかの手がかりになるようなプログラムを考えている。

中大規模木造建築物の防耐火設計に係る地域リーダー育成の必要性

 木造三階建学校の実大火災実験は、木造建築物の新たな領域への扉を開いたこととなるが、木造の防耐火設計もそれにつれて、高度化してきている。新たに出された告示の意味を十分に理解し、かつ、適正に理解した設計者や指導者(地域リーダー)が、一般の設計者の相談役となり、新しい木造の領域をさらに広げていく必要がある。これを推進するために防耐火設計に関して、確認審査に当たる技術者や設計者を対象として全国で20人程度の指導者となるべき人材を育成することとした。