H26年度のコンペティション審査結果(画像をクリックすると拡大されます。)
表彰式は、3月13日に木材会館で行われ、以下の7点が表彰されました。
林野庁長官賞 「境界のキヌア」 大枝 岳 工学院大学
講評:
「コモアしおつ」は、バブル期に造成されたニュータウンである。駅から100m高い壇上の住宅群は、さながら下界と隔絶された別世界の様相を呈している。この天上の街の将来をテーマとして、農業林業と結びつけ、コンバージョンするという着想は興味深い。しかし、そこに展開する建物が、銭湯や宿泊ロッジなのは、やや世俗的ではある。また、提案されている個々の建物は、木造建築として興味深いものがあるが、構法的に共通するものがあると、統一感がでて一層完成度が高まったと思われる。ちなみに、「キヌア」は南米の食用穀物で、語感もいい。ただし、外来種の栽培は植生を乱しかねない。「穀物を育てる」という意味の象徴的なものと解したい。以上のようにいくつかの難はあるが、着眼点の鋭さは、学生レベルとしては群を抜いており、将来の可能性を感じさせる。今後の進化の期待を込めて、林野庁長官賞として推薦する。
木を活かす学生課題大賞 コ・ワーキングカフェがやがや門 遠藤 由貴他 九州大学
講評:
九州大学伊都キャンパスに隣接する地域に建つ築90年の長屋門を地元住民との交流拠点とするため、学生の手で改修した取組である。改修に際しては、地元の森林から学生の手で伐採された木材を使用するなど、森林から木造建築までの木材の流れを体験する取組も組み込まれている。森林保全から木材利用までの多様な要素がふんだんに盛り込まれた優れた取組である。今後も学生の手で<がやがや>が末永く継続していくことを期待する。
木造建築物・工作物部門賞 「空を積む」 堂谷 実穂他 昭和女子大学
講評:
垂直及び水平方向に拡張が自在な幾何学立体ユニットを組み合わせた仮設建築物の提案である。応募作品は、杉角材を組み合わせた46個のキューブユニットを短時間で組み合わせたものだ。角材ユニットを組み合わせるとともに木割れを防ぐための特殊なビスユニットを採用した施工手法によって、女子学生グループが短時間で製作した。キャンパス内に突如出現した架構物は、周囲の緑に溶け込んで、訪れる人々に街中の憩いの空間を提供することに成功している。木デザインの新たな可能性を感じさせる優れた取り組みである。
ものづくり部門賞 「木質材料の新たな可能性」 中 太郎他 東京大学
講評:
垂応募作品は、研究室の取組として五月祭の行事に積極的に参加しながら、木材の持つ可能性を検討し制作・展示している点が評価される。 特に、段階として研究室内コンペを課して、研究室内での競争と選択、さらに現場での施工の段取りまで、模擬的な建設現場を再現して取り組んでいる点に興味を惹かれる。本応募を通して、長年の研究室の取組に敬意を表するものである。
木質空間部門賞 「四谷通り木質化」 伴 麻由香他 名古屋大学
講評:
「本提案は、名古屋大学から地下鉄本山駅までの約1.5kmの道のりにある建築物および道路関連施設等の木質化の可能性を検討し、この時、期待できる炭素貯蔵効果を推定するとともに、法律・メンテナンスおよび予算上の課題も述べたものである。本コンペの重要な審査基準である「木材の環境面における重要な役割の理解」からスタートし、グループの極めて身近な地域を対象に選んだ提案は本部門賞にふさわしい。提案内容の取りまとめ方やその表現力にはやや不十分なところが散見されるが、まだ学部3年生でもあり、今後、こういったスキルに一層の磨きをかけていかれることを希望する。
木を活かす活動部門賞 里山でつながるひととき「人と木」園部 隼平他 兵庫県立大学
講評:
木を活かす活動部門には最多の14組の応募がありました.内容は活動型と提案型の2つに大別されましたが,活動型ではいずれも非常に精力的でかつ継続的な取り組みであり,また提案型では木材の良さを発揮させる興味深い提案が多く,部門賞の審査は困難を極めました.多くの受賞候補の中で,兵庫県立大学学生団体「木の子」の「里山でつながるひととき「人と木」」は学生主体の活動で,2010年発足以後,山間地域での現地活動,子どもと共に動き,考える活動,モノづくりの実践など,年間を通じた充実した活動が評価され,部門賞に決定いたしました.兵庫県立大学「木の子」の皆さんも,惜しくも受賞を逃した皆さんも,それぞれの活動をさらに充実させて,木の活用をそれぞれの地域で十二分に実践し,その魅力を多くの方に伝え続けてくれることを,審査員一同心より応援しています。
地域活動賞
- 「還流学舎」 遠藤 比路子他 岐阜県立森林文化アカデミー
- 東京の木「多摩産材」を知る・触れる・広げるプロジェクト 倉林 紘子他 文化学園大学
- 「佐渡木匠塾」 岡部 光他 芝浦工業大学
- 「スギ材を用いた2x4工法の倉庫」 原 麻里子他 大分大学
- 「角館木匠塾2014年活動内容」 大山 智之 秋田県立大学
講評:
今回受賞された活動をはじめ、応募された様々な活動・取組から、この事業の主旨となる“担い手育成”が各地域で様々に実践されている様子が伺え、大変嬉しく思いました。応募頂いた提案について、特に活動部門に関しては、各地域でその地域の状況に応じた取り組みがなされており、それらの活動内容については必ずしも優劣を付けられないと言えました。そのような経緯より、各地域において代表となるような活動に「地域賞」を授与し、地域の目標となって頂くと共に、今後の活動の励みとして頂きたいと考えました。さらなる地域の発展に寄与することを期待しております。
東京の木「多摩産材」を
知る・触れる・広げるプロジェクト
審査員特別賞 「木のいろ 色鉛筆」 鈴木 智佳 富山大学
講評:
垂山にはえている木が様々な色を持つことは、意外と知られていないのではないか。このえんぴつは、木材の特徴や色合いを使いながら学ぶ、木育の道具である。広葉樹、針葉樹問わず、子供達に広く木材に興味をもってもらう道具としては最適でとても魅力的である。ただし、木材の色と芯の色をどこまで合わせるか、通常は針葉樹でつくっている鉛筆を硬めの広葉樹でつくれるかなど検討点も少なくない。だからこそ、夢があって良いのではないか。是非、課題を克服して実用化してほしい。